ガワラジオ

個人的な出来事の整理用。

 

金曜22時50分。バスタブに39度の湯を溜め、風呂に入る。ここ数年は時間が許せば近所の銭湯に行きサウナを愉しむ生活を送っていたが、持病の偏頭痛の悪化にサウナが少なからず貢献しているらしいことを知り、最近は専ら家風呂派となっている。

 

ランドリーラックにBeats Pillを置き、PCからラジオの放送を飛ばす。僅かに開けている風呂場の扉から漏れ聞こえるお笑い芸人の声は、柔らかく陽気である。

 

斯くして11階角部屋、20代後半の一人風呂は、音声的な寂しさを紛らわせることに成功しているのであるが、耳以外は依然として暇を持て余している。僕は常に五感全てを満足させなければ気が済まないのである。

 

せめてもの暇つぶしに、入浴後にバブを投入した。バブの挙動に夢中であった4歳児の頃から、僕の本能的な興味は変わっていないようである。当時の遊び方を採用することにした。

 

直方体であるバブの1面には浅い窪みが作られている。表面積を大きくする事で、水との反応速度を向上させ短時間で溶解させる意図があるのであろう。

 

その窪みに水を溜めてみる。水と接している部分は反応を続け、接していない部分は反応を起こさないまま残る。理論上、(溜めた水中のバブ濃度により反応は遅くなるので水の交換は必須である。)窪みが拡大を続け最終的に穴が開くのである。僕はこの、穴が開く瞬間を見たくてたまらなくなった。穴が開いた瞬間に、溜めた水は瞬時に穴から流れ落ちることになるだろう。

 

バブはなんの変化も無いまま、僅かにシュワシュワと音を立てている。ラジオから笑い声。今頃陽気な友人たちはクラブで踊っているのだろうか。バブはシュワシュワとか弱い音を立て続けている。

 

ラジオは曲を流し始めた。芸人は水を飲み休憩中であろうか。口ずさむこともできぬ、全く知らない曲である。バブはシュワシュワと…。

 

と、窪みに溜まった淀みは微かに水位を低め、揮発音は徐々に振動数を変えた。ついに、その時がきたのであるが、想定よりもずっとゆっくりと、地味に水位を下げていく。淀みなのか、本体の固形分かもわからないドロドロとしたものの奥に、僅かに空いた穴が現れた。

 

僕は、これが見たかったのだろうか。熱望した穴は、ひどく地味で、小さく、不細工であった。