ガワラジオ

個人的な出来事の整理用。

朝活

いつからになろうか。たしか2回生の終わりだった。僕はNIKEの薄手のマウンテンパーカーを着ていたから、きっと冬用のアウターはもう必要じゃなくなった春先だったと思う。詳しい理由はもう覚えていないけど、僕と友人Wは朝活を始めた。朝が弱くて一限を寝過ごしがちな僕等は、一緒に朝ごはんを食べる契約を結んだのだった。

 

キャンパス近くのモスバーガーのモーニングセットを食べながら、当時そこでアルバイトをしていた僕のサークルの後輩の女の子が可愛いかどうかで大激論を交わした事を今でもよく覚えている。

 

4年たった今でも話題は変わらない。時に哲学や政治の話をしたりしたこともあったけど、僕らの話題の中心はいつでも女の話であった。

 

朝活。意識の高い大学生がビジネスの勉強をするために都内のスターバックスでコーヒーを飲む会に使われる単語であるが、僕らの場合はそんな褒められたものではない。せっかく早く起きたのに、女の話をしながらだらだらと飯を食い、授業中はぐっすりと眠るのである。

 

「よくやってきたな。」

 

普段は愛情やら友情やらに興味を示さないWが言うたびに、なんとも言えない照れ臭さや誇りの念を抱いた。

 

そんな朝活ももうそろそろ終わる。

 

東京にいってもやろうと言ってはいるけど、お互い忙しい会社に勤めるし、多分やらないんだろう。

 

4年朝ごはんを一緒に食べてきた。サークルの会長だった事より、国際学会で英語の発表をした事より、誰かに言って感心されてきたのはこの朝活だったかもしれない。

 

研究室の同期のMがよく口にする言葉が頭をよぎる。

 

「親友親友てみんないうけれど、親友なんてそんな簡単にできるもんじゃない。」

 

たしかにそうだと思う。大学に入ったばかりの僕は、親友とは地元の中学校でともに過ごしたアイツらしか得るべきではない称号だと思っていたし、高校までで得た人間性で大学より先の人生を消化していくにすぎないと考えていた。

 

だけど、僕とWは4年間朝ごはんをともに食べてきたのである。当時はそんなに仲良くなかったのに。

 

思えば、今ではトレードマークになったキャップも、30分おきに吸うようになったタバコも大学に入ってから始めたものである。

 

関東から出てきてアウェイだと思っていた京都も、4回生で越してきて就職するまでのとりあえずの住処だと思っていた桂も、今では大好きな僕の第二の故郷である。

 

今度会ったらMに言ってやりたい。親友なんて、こちらが親友と呼ぶ勇気さえあればいつでも隣にいるものだと。

 

さて、明日も桂にきて行きつけになっているタバコを吸えるカフェでWと朝ごはんを食べよう。そして昼は、半年前に紹介してもらった汚い定食屋で生姜焼きを頼もう。来年にはきっと思い出の場所になっているさ。